2019年09月30日

第15回「ライフプロデュース」研究会、開催しました。

皆様、こんにちは! 令和元年9月最終日―如何お過ごしですか?
第15回、「ライフプロデュース」研究会、開催いたしました!

今回のテーマは『居場所がなく孤立した人の見守り方、接し方』でした。冒頭で、先月から研究会の参加いただいている、臨床心理士の岡田慶子さんより、心理職の立場でレクチャーいただきました。その後、参加者10名で2時間ほど議論―。その詳細についてご報告いたします。今回の纏め役は、元食品会社の企業戦士だったWさん(60代半ば)です。

 岡田さんは、心理職の立場から、『「ひきこもり」の人たちも含めて、孤立して居場所のない人たち全体に共通する問題の本質は、つきつめると 「生きる意味の喪失」ではないでしょうか。生きる喜びを感じること、それはその人なりの幸せを意味しており、必ずしも社会に出て就労することや、他の人の役に立つことや、賞賛や評価を得ることだけではないように思います。』と述べておられます。

第15回 ライフプロデュース 研究会.jpg

2019.9.25 LP研 「まとめ」
テーマ 『居場所がなく孤立した人の見守り方、接し方』  編集担当 W

議論に入る前に臨床心理士の立場から、岡田さんより今回のテーマに関連して下記の3つの項目についてレクチャーをいただいた。

1.「ひきこもり」の定義:
様々な要因の結果として、社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたって、概ね家庭にとどまり続けている状態を指す概念
2.「ひきこもり」の要因:
「個々のケースの背景にあるもの」、と「現代社会が生み出しているという側面」、「親の養育態度等の家庭環境との関連」等、様々なケースが考えられる
3.「ひきこもり」の支援の課題について:
「支援機関へのつながりにくさの問題」、「支援のゴールをどう考えるか」、「高齢化の問題」(いわゆる「8050問題」等)といった様々な問題、課題がある

次いで議論に入り、まずAさんから、「ひきこもりの前段階として『居場所がない人』⇒『ひきこもり予備軍』の方々がおられる」との提起があり、またBさんは「他人が思うほど、ご本人は寂しく感じていないというケースも多いのでは」とも。Cさんは(元カウンセラーの立場から)「うつ病の方に『頑張って』と励ますことがタブーのように、『孤立しかかっている方』に、周囲があまり余計な干渉をしたり、アドバイス等をするのは適切ではない。むしろ、相手の方と一定の距離感を持ちつつ寄り添い、お話はしっかり傾聴する(時に共感する)姿勢をとっていくことが大切と思う(まずは自分への信頼感を得ることが大事)」と。
 
次いでDさんは「年齢に関係なく突然『ひきこもり』状態になることがあるのでは。(ご自分の経験から)突然の病い発症後、治療を経て社会復帰した後、そういった経験をしたことがプラスにもなったと感じた」と述べ、そのご経験から「周囲の方々には、遠くから見ていて欲しい、ニコニコ笑って見守っていて欲しい」と貴重なアドバイスも。またEさんは、「児童虐待等があった場合は、公的機関へつなげていくことが大事。」といった意見も。Fさんは、「サラリーマン、特に若年層の方々がむしろ深刻だ。孤立とフラストレーションは違う」、そして「男女差もありで、男性の方が社会的挫折感を味わうことが多く、男性の方が孤立する傾向が強いのでは?」といった意見も。

Gさんは、ライフプランリスクについて「金」、「病気」、「離婚」、「親の介護」等々の要因があると語られ、「日本の若者は親と同居する割合が高く、海外では早い段階で親離れ子離れがきちんと出来ており、こういったことも要因の一つになっているのでは?」と指摘された。Hさんは、ご自身の親子関係でのご経験に触れられ、様々な紆余曲折を経て、最終的にはお子さんの方が、「これはヤバイ!と思った」と自覚されたことが良かったと述べられた。Iさんは、シニアを中心とした『自立支援』について組織として取り組んでおられ、「高齢者については、あくまで『場』をつくって、呼びかけるまでが重要で、無理やり引っ張り出すまではNG!」と貴重なアドバイスを頂戴した。またJさんは「自分が役立っている場所」=「居場所」なのでは?とご自身の被災者支援活動のご紹介に沿って述べられた。

そのお話をうけて、最後に「居場所」=「役割」がキーワード、また、「居場所」とは単に「場所」ではなく、気のおけない話ができる「友人たち」の存在が大きいという点でも共感を得た。

 今回は「ひきこもり」のお話から「孤立の問題」へと様々な角度、視点からの議論が盛り上がり、あらためてこのメンバーの「多様性」の有難さ、貴重さ、素晴らしさ等々を実感したひとときでした。

以 上


【編集後記】  中村昌子              
研究会開催後、今回纏め役担当のWさんより研究会アドレス宛にメールが届いた。 団塊世代 元サラリーマンの「孤立の問題」にフォーカスして、元職場の先輩の具体例を共有された。高度成長期を担った団塊世代の企業戦士が定年後、家庭でも居場所がなくなり、成長した子どもたちとも会話が全くかみあわず、「熟年離婚」に至ってしまった実例だった。Wさんは、身近な方のこうした事例に直面し、「すぐには良い解決策等が見いだせない」状況の時には、見守る立場として、「焦らず、まずは、相手にしっかり寄り添い、話をじっくり傾聴することが第一、そして出来るだけ共感の意を伝えることが大切であり、そこから<その先>が始まるーと身に染みて感じている」とのことだった。

中村の家族の例も一つご紹介したい。3歳上の姉が、熟年離婚を機に孤立し、独り、引きこもり状況がかれこれ10年以上続き、家族の心配事の種だった。その間、私を含む3人のきょうだいたちは、留守電にメッセージを残したり、手紙を書いたり、食材を送ったりはしてみたものの、返事すらないことが続いた。このままでは姉の老後は「孤独死」だってあり得ると心配していたところ、昨年、姉の日常に、一筋の光が射した。ハローワークで応募した、表参道の大通りに面した、ナチュラルフードのお店に66歳で採用されたのだ。姉は、「実社会」と関わりはじめたことをきっかけに、みるみる自分を取り戻し、趣味の水彩画も再開し、私たち、きょうだいとの関わり方も少しずつ変わってきている。
昨日9月29日は、その次姉からの誘いで、表参道の若者に人気のハンバーガー屋さんで長姉と3姉妹でランチをした。私たちとのおしゃべりを楽しみつつ、ハンバーガーを頬張って食べる現在67歳の姉の横顔を眺めながら、生きる力を取り戻した姉の姿に嬉しくて胸が詰まった。昼食後、姉が働いている職場の方々数人にも紹介され、その方々の温かな雰囲気と笑顔に「あ、なるほど。」と感じた。外国人客も多いその店はオーガニックの食材やアロマオイル&化粧品も扱っており、専業主婦期間が長かった姉は、語学に、アロマの学びにと、向学心も芽生えているようだ。この日を迎えるまで、一体全体、私たちはどれだけの月日を費やしたことだろうか。

社会が人を片隅に追いやってしまう場合もあれば、社会という「窓」がその人の自己を取り戻す役割を担う場合もある。久しぶりに浴びる「社会の窓からのそよ風」で、姉は安堵し自分を取り戻しつつある…….,,うまく言えないが、そんなふうに感じた、令和元年、9月最後の日曜日だった。
第15回 ライフプロデュース 研究会 ハンバーグランチ.JPG

次回開催は
10月23日(水曜日)18:00〜20:30
テーマ:最近、自分自身がUp-datingしている(更新中!)と感じていること
場所:内幸町 日本プレスセンタービルディング9F 日本記者クラブラウンジ
posted by ライフプロデュース研事務担当 at 10:16| Comment(0) | ブログ