リタイア後、地域コミュニティの中で、今までの経験やキャリアをひとまずリセットして「ただの人」になることはとても難しく、特に現役時代、企業や組織の要職であった人の場合はなおさらです。英語で「learn」は学ぶこと、もう一つ、「unlearn」というのがあって、「unlearn」は今まで身に付けてきたことを一回外して新たなことを学ぶような意味があります。その「learn」&「unlearn」の二つを意識し両者を上手に機能させると、リタイア後、向学心を保ちつつ、新たな人間関係や地域社会で、自己更新を続けることができるのではないでしょうか。
今回ご紹介する文太さんは定年後、正に「learn」&「unlearn」の二つを見事に融和させて、複数のコミュニティ活動のハブ的存在として精力的に活動されておられます。以下、文太さんの近況とイギリスU3Aについてのレポートです。
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ご無沙汰しています、文太です。新型コロナ感染の緊急事態宣言が解除され1ヶ月以上経過し、少しずつ日常を取り戻しつつありますが、一方東京都では6月20時点でも40人近くの感染者が出るなどまだまだ緊張を余儀なくされる日々が続いています。
私は退職して7年経ち現役時代とは全く違ったフイルードで活動に取組んでいます。具体的には外国人への日本語学習支援、市民大学の講座企画およびコーディネート、2ヶ月に1回の読書会の主宰、市民大学修了者を中心とした研究会の主宰、神奈川県内のシニアを中心とした一般社団法人での仕事や健康維持のための週2,3回のテニスおよび趣味のサックス演奏などを行っていますが、いずれも活動は自粛の状態で打合わせや会議等は専らWebで行っています。6月に入りテニス倶楽部は再開となったものの日本語教室は8月までクローズ、また年末に予定していたミューザ川崎シンフォニーホールでのアンサンブル演奏会も中止になるなど今までの生活リズムや予定していた計画が大きく変わりました。この間は外出自粛の要請もあり、大半を自宅で過ごす時間が増え普段はあまり出来なかった家の周りの手入れや本などの整理を行うなどと共に、昔読んだ本の中から何か今の時代に求められ通ずるところのある行雲流水の生き方をした鴨長明の「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」で始まる「方丈記」を再度読み返えしたり、最近話題になっているマルクス・ガブリエルの「新実存主義」「欲望の時代を哲学する」の読書(精神の存在や心)に時間を費やしたりしていましたが、数年前から関心を持ち市民大学の講座企画を始めるキッカケにもなったピーター・ラスレットらによるイギリスの高齢者の学びの原点になっているU3A(University of the Third Age)について、どうして40万人を超えるこれだけ多くの高齢者に共感・支持され受け入れられ拡大し続けるのかも大変興味がありこの際その要因などをもっと調べてみたいと思いHPなどで検索したりしていました。また、前述したサックス演奏ですが、私が音楽に関心を持ち始めたのが大学の頃でFM放送から流れてくる音楽を毎日のように聴いていました。私がサックスを始めたキッカケは社会人となり友人とジャズライブのセッションを聴きに行った時にプロのサックス奏者からどうですかやってみませんか、教えてあげるからと言われて、学生時代に他の楽器を少しやっていたこともあり、この機会を逃したらたぶんこれからも無いだろうと考え個人レッスンを始めたのがそもそもの始まりででした。今でも月に2回ほどレッスンを受け年末の演奏会に向けて練習に励んでいましたが、残念ながら中止となってしまった。何でも同じだと思いますが、ある程度のレベルには到達できても、そこから上のレベルは才能に加えて人並み以上の努力、練習のように思う。いうまでもなく音楽的なセンスも求められこれはなかなか難しく奥も深く、特にジャズは私にとってはかなりハードルが高い存在となっている。練習は音が大きいため自宅ではできず、専ら近くのカラオケルームで行っていたが、それも新型コロナのために使えず、音は出さずにリズムに合わせて運指の練習などをしているが、どうも音が出せないのでしっくりとこない。現在、練習しているのはジャズ愛好家だけでなく誰でも知っているポールデェスモンドの5/4拍子のTake Fiveやスタンダード曲に取り組んでいるが、セッションできるレベルにはまだまだである。
最近は中高年が集まるイベントや友人、知人のホームパーティなどから声がかかったりした、時には映画音楽や演歌なども演奏したりしていましたが、ここ数ヶ月はこれも自粛状態、音楽は私にとって生活に適度な刺激と心の豊かさと潤いを与えてくれるそんな存在である。一方で関心のある1つであるU3Aからは多くのこと、たとえば「教える者も学び、学ぶ者もまた教える」および「YOU ARE NOT ALONE」思想と「誰でも気兼ねなく相談できるDROPIN」のサポートシステム、また、100以上も有る豊富なSubjectsと全国何処にいても等しく学べるITを利用した仕組み、それらを支えるグループ・コーディネーターの存在と役割などハード面とソフト面の融合と充実、並びにイギリスの長い歴史と文化の中から生まれたボランタリー精神などを知ることができた。日本には日本にあった独自の方法はあるとは思いますが、このような何処にいても自分が関心のあるSubjectsを学び、そして教え、共に繋がりを持ちながら成長し、再度社会を支え合えるような高齢者大学や市民大学などの全国組織のネットワーク化と仕組の構築と併せて意識の改革、行動の変容により、また違った景色が見えてくるかもしれないとアフターコロナを見据えて想う今日この頃です。
✻*˸*˸*⋆。˖✻*˸*˸*⋆。編集後記 ✻*˸*˸*⋆。˖✻*˸*˸*⋆。˖
by Hana
文太さんを見ていると映画「終わった人」(原作:内館牧子)にあるような、定年後のエリートの悲哀は全く感じられません。
文太さんは「現役時代は組織をベースにした縦の関係で成り立っているが、定年後はフラットで上下関係のない平等なところからスタートする。特に男性の場合、定年を境として急に地域の活動や社会貢献活動をしようと思ったとしても、自分の中での現役時代のキャリアや価値観とのギャップやギアの切り替えが判らないなどの理由からか、unlearn、つまり身に着けているものを外していくことがなかなか出来ないでいる人の方がまだまだ多いのが実情なんだよね。」と同世代,企業人管理職だった方々の定年後の特徴をシビアに分析しておられます。
気がつくと、さまざまなコミュニティのプラットフォームで、なくてはならない存在になっている文太さん、いくつになってもこの謙虚さとしなやかさが、周りに安心感を与えるのかもしれませんね。
文太さんは、趣味でサックスの演奏もされます。今回、この編集をしながら、文太さんの演奏するサックスの素朴で優しい音色が蘇ってきました。
〜 to be continued〜