2020年09月15日

非常勤講師のひとりごと 正岡さんからの近況報告

夕方は陽が落ちるのが早く、めっきり秋めいてきました今日この頃、皆さん、如何お過ごしですか。
新内閣の顔ぶれに、様々な思いをお感じのことと思います。安倍政権の看板政策の1つに「女性活躍」があったはずでしたが、今回、菅新政権で選ばれた女性閣僚は、上川陽子法務相と橋本聖子五輪相の2人だけー、何か時代の潮流にミスマッチと思った方は多かったのではないでしょうか。......。

さて、久しぶりのブログ更新です。今回は、元A新聞スポーツ記者, 現在は、都内のO大学で、非常勤講師として「スポーツ ジャーナリズム」の授業を担当している正岡さん(61歳)の「オンライン授業ルポ」です。わかりやすく、読みやすく臨場感あふれる話の展開、コロナ禍の一面を切り取ったシリアスなテーマなのに、ご本人がZOOMと格闘する姿に思わず、くすっ!と笑ってしまいますが、ご本人が仕事で直面し実感している問題点を抽出する文章運びは、流石だなと思います。正岡さんは、普段はニヒルな佇まいで、自称、「引っ込み思案の人見知り」とおっしゃっていますが、受講生への鋭い観察眼を見ると、「実はこの方は、ヒトが大好きなのでは?」と思わず思ってしまう、以下、正岡さんの「スポーツ ジャーナリズム」のオンライン授業の現場レポートです。


オンライン授業はいいけれど……。 〜非常勤講師のひとりごと〜
大学非常勤講師 正岡


「ハイ、みなさん。おはようございます。それでは、授業、始めます」
このコロナ禍で気分は憂鬱なまま。少しカラ元気をだしながら、薄暗い自宅マンションの一室で、黒い画面に向かって話しかける。相手は私の講義を選択した約200人の学生たち。さえない私の顔だけが、画面左隅にちょこんと写る。あとは白い名前の文字だけが並んでいる。
 私の通う大学でも、4月からオンライン授業が始まった。デジタルにめっぽう弱いものには、まったくの未知の世界。不安で不安でたまらなかった。ところが、そんな思いを察してか、先輩先生が「オンライン授業のための準備講座」を開いてくれた。これは大学側の準備ガイドとは別に、まったくの初心者でもわかりやすく、一緒にZOOM画面を使って、作業手順を一から教えてくれるものだった。
 ミュート、チャット、ブレークアウトセッション、セキュリティー、ギャラリービュー……。最初はなにもかもちんぷんかんぷんだったが、連日のように1か月も“特訓”を受けたおかげで、授業前にはなんとかパソコンでの画面操作はできるようになっていった。
 そして、いよいよ授業開始。始まったはいいが、最初から冒頭の場面に出くわし、面を食らってしまった。オンライン授業といっても、学生たちは顔を出さないのである。理由はいろいろあるらしい。「恥ずかしい」、「起きたばかりだから(化粧をしていないんで)」、「パジャマのままだから」、「家の中を見られたくないんで」……。こっちだってそうだ。恥ずかしいし、まだ顔も洗っていないし、下は短パンだし、家の中はぐちゃぐちゃだし。だからといって教員のほうから、「顔出し」の強制はなかなかできない。大学側によれば、プライバシーの侵害を招く恐れがあるとかで。中には、授業の様子を写真に撮り、それをSNSなどで共有する輩もいるらしい。
 考えてみれば、私自身もこれまでZOOMで行われていた会議や研修などで、できるだけ「顔出し」は避けてきた。それは時間が長ければ長いほど、人数が多ければ多いほど、なんか恥ずかしくなる。それに、もともと引っ込み思案な性格だ。だから、学生の気持ちはよくわかる。
 前期の授業をなんとか無事に終えることができたが、ひとつだけ困ったことが起きた。学生たちの評価の問題である。これまでの対面授業であれば、課題レポートに加え、日ごろの授業態度でその学生の学修意欲なるものを見ることができた。「あいつは、また寝ているな」、「今日も遅刻か」、「いつもしゃべっているな」とか言って、チエックすることができた。オンラインではそうはいかない。出席率はやけによくなり、遅刻を把握するのも難しい。要するに、オンラインでは評価の判断要素が極端に減るのである。
 予期はしていたが、ある1人の学生から評価に対するクレームがきた。「先生、僕の評価はなんでこんなに悪いのですか。納得がいきません」。調べてみると、彼の課題レポートの成績は確かにいい。しかし、欠席数があまりに多かった。その旨を説明すると、「そんなはずはない。僕は毎回でていた」という。もう一度、出席履歴をチエックしてみると、確かにきちんと出席していた。再度、データをよく見ると、彼は出席カードを授業中に提出するのではなく、だいぶあとになって毎回、提出していた。
 私は授業ごとに、簡単な課題を出し、そのリアクションを書かせていた。それが授業内に提出されれば出席とするが、そうでなければ欠席扱いとしていた。そうしなければ、本当に授業にでていたかどうか、判断がつかないからである。悪知恵を働かせれば、授業には出ていないが、オンラインだけにはつないでおき、あとから友人に課題を聞いて、それを提出することだってできるわけである。
 対面授業のときは、こんなことがあった。いつも前の方に座っているのだが、どうも睡魔に襲われるらしく、よく眠っている学生がいた。聞けば、毎日午前7時からの部活動の朝練がきついのだという。一生懸命、授業を聞こうとしている気持ちはこちらにも伝わってくるのだが、ついついこっくり、こっくりとやっている。時には熟睡していることすらあった。
 それでも普段は、真剣な顔をして真面目に授業を聞いている。質問に対する反応もいい。課題レポートもまあまあだ。居眠りは玉にきずだが、この学生に悪い評価をつけることはできなかった。毎週顔を合わせていれば、学生の学修意欲というものは、なんとなくわかるものである。それがオンラインでは、まったくわからない。
 このコロナ時代にあってスタートしたオンライン授業。もちろん、いい面もたくさんある。通学時間がなくなり、遅刻や欠席が極端に減った。授業中はまったく静かである。いくつかのグループに分ければ、簡単な議論もできる。配布する資料の数も少なくて済む。講義の内容をより丁寧に説明することができる……。一方で、学生側からすれば、不満の方が圧倒的に多い。学修意欲がわかない、疲れる、友だちができない、精神的なストレスがたまる、課題が多すぎる。
 9月も半ば。もうすぐあのオンライン授業がやってくる。正直、憂鬱な気分は消えぬままだ。それは何はともあれ、いま一番求められているのは、教員の質の問題なのであろう、と自覚してしまったからかもしれない。パソコンのリモート操作の習熟は前提として求められ、いかに魅力ある授業を行うことができるか。単に内容の充実ばかりでなく、時にはエンターテイメント的な要素も必要なのか。チャットなどをうまく活用し、いかに双方向型の講義に持っていくか。だらだらと多くを語らず、簡潔な言葉で、学生たちにどこまで訴えかけることができるのか。
 これはオンライン授業に限った話ではないのだが、改めて考えさせられてしまった。

                        
O大学 非常勤講師 正岡



czoom free illustration.jpg

゚❈*゚*❋⁎❈*゚*❋ 編集後記゚゚ *❋⁎❈*゚*❋⁎❈

   
by Hana


今回、正岡さんのオンラインの大学の授業と、私が関わっている公立小学校の授業の現場を比較してみました。公立小学校の現場では、授業については、密を避けるためにペアワーク、グループワークはなるべく控えて、デジタル教材の割合が増したことは事実ですが、一部の児童を除いて、小学校での対面授業を大いにエンジョイしている様にみえます。( 3密を避け、登校時検温あり、手洗い徹底、消毒の徹底などは周知徹底。)授業間休み20分では、この季節、竹製の水鉄砲をしたり、シャボン玉で遊んだり、竹馬に乗ったり、プール代わりに担任の先生と水道の蛇口から長く伸ばしたホースで水浴びし、全身ずぶぬれになってはしゃぎまわる子どもたちの姿を見ると、大人たちは、コロナ対応で業務が増えた大変さを上回る幸せな気持ちになります。
今回、正岡さんの大学オンライン授業のリアルな現場の様子をうかがって、改めて「コロナパンデミック」の時代に大学生活を過ごした若者たちがどんな社会人となっていくのだろうか、大人たちが注視しなくてはならないテーマだと実感しました。テクノロジーの発展で、コミュニケーション能力他、ヒューマンスキルの蓄積が見過ごされないようにと願うばかりです。

シャボン玉.png


〜to be continued 〜

posted by ライフプロデュース研事務担当 at 06:05| Comment(0) | ブログ