2023年03月27日

第41回「ライフプロデュース研究会」の報告

お久しぶりです!「ライフプロデュース」研究会です。
コロナ禍の中も、休会なしで、1回/月の開催を続けてきた、「ライフプロデュース」研究会は41回目を迎えました。毎月、「シニア社会学会」のWebNews「JaasNews」で開催報告しておりますが、今回は、開催日が記事の締め切りの前日で間に合わず、この研究会ブログにて報告させていただきます。
尚、31回〜41回の開催内容は、学会誌「エイジレスフォーラム」で纏めて報告いたしますが、このブログでもご紹介できるかどうか検討中です。お楽しみに。

第41回 「ライフプロデュース」研究会の報告
タイトル:読書会『「オッサン」の壁(講談社現代新書)2022年4月』
著者:佐藤千矢子 1965年生まれ
         2017年全国紙(毎日新聞)で初の政治部長に就任、2022年4月から論説委員。
参加者:6名 女性4名 男性2名  (ファシリテーター:岡田慶子)
和田(80代後半 F)長谷川 若井( 70代 M)柴本(70代 F) 岡田 中村(60代 F)


オッサンの壁.jpg

冒頭で↓1.2の説明を実施
1. はじめに「オッサン」とは何か
「オッサン」とは、男性優位に設計された社会で、その居心地の良さに安住し、その陰で、生きづらさや不自由や矛盾や悔しさを感じている少数派の人たちの気持や環境に思いが至らない人たちのこと、あるいは、既得権を手放したくないために、あえて気が付かないふり、見て見ぬふりをしているかもしれない人たちのこと

2・「オッサンの壁」とは具体的にどういうものなのか
政治記者という特殊な勤務形態、過酷な職場環境の中で、著者が実際に経験したり、見聞してきたセクシャルハラスメントの実態。オッサン社会を生き延びるために、男性に同調してひたすらオッサン化する著者。2021年日本労働組合総連合会長に、初めて女性、芳野友子さん(日本労働組合総連合会長)の就任挨拶、『ガラスの天井』、「ガラスの崖」についての解説。「危機的な状況にある組織ほど、女性が要職に就きやすい傾向がある。成功すればもうけもの、失敗すれば「やっぱり女性はダメだ」といって、崖から突き落として、使い捨てにするという発想。

【意見交換一部抜粋】

若井:「オッサン」とはある意味、組織の中で権力を持っている人ではないだろうか。だから男性の中においても、権力のある人とない人との分断はあったと思う。権力のある人は自分の周囲にYES manをおきたがる。

柴本:日本経済新聞社に昭和50年に入社。男女雇用機会均等法の10年前だったので、大手新聞社の記者の募集は男子学生のみとはっきりしていた。日本経済新聞社がデータバンク局を発足し、秋に募集して、女子も受験可としたところ、採用する気のなかった女子が、成績上位を占めてしまった。結局私を含めて女子5名が採用された。私はどうしても新聞記者になりたかったので、ことあるごとに異動させてくれと主張して運動した。「雑誌の編集なら可能」ということで、やっと『たまごクラブ』『ひよこクラブ』の編集を担当、編集長を担った。女性誌なので、部員はほとんど女性だったし、ロールモデルもいたし、きわどいハラスメントもなかった。
私はオッサンも悪いが、ある意味オッサンも犠牲者だったと思う。日本の社会全体を根本的に変えることができずに男性中心で来てしまって、そういった考え方がしみ込んでしまった。考え方を変えられる人と変えられない人がいると思う。

岡田:私の就職したのも均等法以前だったから、男子と女子は別枠で、しかも、女子学生は自宅通学者が望ましいとあって、下宿している、地方出身の女子学生は不利な状況もあった。それは女子学生を一人前として扱わずに、会社が管理しなくてはならない対象と考えていたからで、本当にとんでもないと私は思った。就職に際して、全て男女平等の就職先を選んだら、大学職員しかなかった。大学職員として入ってみて、建前は女性だからと差別されることもハラスメントもなかったけれど、アカデミックな世界でもまだまだだなあと思うことはいっぱいあった。女性の教員がまず極端に少ないし、トップの総長については、立教大学の140年の歴史の中で、未だに女性の総長が実現できていない。本当にまだまだだと思う。

長谷川:社内結婚が多い会社だった。結婚したら女性は当たり前のように退社した時代だった。均等法ができてからは、女性がお茶くみをしなくて済むような体制になったと思う。後半、地方勤務が長かったので、事務の女性とトラブルにならないように気を付けていたと思う。得意先でスキャンダルなことをして問題になった例はあったと思う。

和田:ハラスメントの経験は全くない。女性が大学に入学するのが珍しい時代で、殆どが高校卒業したら花嫁修業して嫁に行く。薬学部は定員40名で、テストすると女子が上位を占めるので東京女子医大がやって問題になった不正入試。女性が不利な扱いを受けることはとっくの昔に同じことをやっていた。子育てが終わるまでは仕事はせずに、貯金をして子育てが終わってから薬局を開業した。

【子育てと仕事の両立の問題について】

頑張ればできるとか「精神論」ではなく、違いを乗り越えてシステムをつくっていくしかないのではないか。因みに、岡田は下記の2つのパターンのうちBの「出入り」型を希望した。
季節労働的に残業の多い「教務部」に勤務していたが、子育て中は比較的残業の少ない「図書館」勤務に異動させてもらって、本当に有難かった。二人目が2歳になった頃、突然、「秘書課」に異動になり毎日残業の生活になった。

A:「細く長く」型:子育て中の一時期は短時間勤務などで仕事をセーブしながら希望の部署でキャリアを積み上げる
B:「出入り」型:子育て中の一時期は他の部署に異動しても、再び希望の部署に復帰できるようにすること


〖選択的夫婦別姓問題について〗
「オッサン」のリトマス試験紙
選択的夫婦別姓問題に賛成するか、反対するかは、「オッサン」(オッサン予備軍を含む)か?否か?を判断するリトマス試験紙のような役割を果たしている。参加の皆さんに選択的夫婦別姓問題について、賛成か反対かをお尋ねしたところ、以下のように、概ね賛成だった。

柴本:私個人は姓を変えることに何ら抵抗はなかった。韓国は別姓で、姓を変更することを屈辱的と考えるらしいが、私は選択できる自由があってもいいと思っている。世の中には喜んで夫の姓に変える人もいる。
中村:旧姓に愛着と誇りをもっていたので、中村に変える時に抵抗はあったけど、福利厚生上のメリットが大きかったので変えることにした。選択できるようにしたらよいと思う。
若井:オッサンは男性優位社会を維持したいから今までの体制を変えようとしない。反対理由が、認めると家族が崩壊するからということだけど、G6は皆認めてるし、家族は崩壊してない。自由に選択できるようにした方がよい。
長谷川:世界の流れからいえば、相続のことなど考えると面倒だけど、選択できるように変えていくべきかと思う。賛成に近い。

【第5章 壁を壊すには】
「オッサンの壁」のある社会で、女性たちが『生きづらさ』を感じず、気持ちよく働ける環境を実現するためには、何が必要なのだろうかについても意見交換しました。著者の言いたいことを抜粋すると、

「女性が働きやすい社会やシステムを構築することが一番の課題―。クオーター制の導入によって女性の管理職を増やしたり、男性の残業時間削減や育児参加を進めるなど、強制的にシステムを整えない限り、今の状況は変わらない。著者は、女性は能力がなくて仕事ができないのではなく、環境がそうさせないだけなのだと、自分が男性と同じように働くことで証明したかった。今やそれを誰もが理解する時代になった。あとは環境をどう具体的に変えるかだけ、・「オッサンの壁」は越えるものではない。壊すものだ。」と。

【 おわりに 】

自分の言葉で滔々と語る女性たちと、言葉を持たずに戸惑う男性たち、男性は立派な当事者なのに、それに気づいていないだけなのではないか。女性の生きづらさは、男性の問題でもある。女性が生きづらい社会は、男性だって肩肘張っているが、本当は生きづらい社会なのではないか

岡田:それでは、皆さんから全体を通して感想、また、どのようにして、オッサンの壁を壊したらよいのか、ご意見をいただきたい

中村:この問題、多くの男性は、あくまでも自分自身以外の他人事と思っている。自分は、女性に理解があり、尊重もしているから、自分は「オッサン」ではない、当事者ではないと思っている。が、実はあなたも正真正銘のオッサンのところがありますよ、と言いたいタイプもいる。「自分はオッサンかな?」と自問自答できる男性が増えていくだけでも、世の中も少し変わるのでは?
小学校の同僚たちは、20代から30代がメインだが、性差は殆ど感じない業界で心地よい。「昇格」となると違うかもしれないが、「社会はこうして進化していくのだな。」と日々、現場で感じていて、この点は良い傾向だと思う。その昔、前職マネジャー時代、ほぼ同期だった隣の部署の男性の室長から来客もいないのに、「中村さん、お茶入れてくれる?」と部屋越しで言われた情けない記憶が蘇った。「え?私が、今、あなたにお茶をいれるんですか? はっ? 」とむっ!とした記憶….だ。今の時代、信じられないような笑える漫画の様なワンシーンだけど。

若井:男性には当事者意識はないと思う。中国で言われる、「足を踏む人、踏まれる人」とあるように、女性の痛みや生き辛さは男には分からないと思う。男は鈍感だから、これだけ言ってるのに、言われないと気が付かない。無駄だと思わずに、もっと男に主張していったらいいのではないかと思う。家の中では影響大で、我が家では実効支配は妻。でも、社会は圧倒的に男性優位社会であり、世の中をよくしたいと思っている人が抑えつけられている。一番酷いのがロシアのオッサンでこれを何とかしないといけないと考えている。

長谷川:田中角栄の娘、真紀子が台頭してきたとき、サッチャーとイメージが重なって、将来国を代表する人になれるのではないかと思った。(※注:長谷川さんは、サラリーマン時代のほとんどを北陸地方で過ごされました。)やはりリーダーとして、ジェンダー関係なく、資質のある人がなるべき社会だと思う。男が牛耳ってる社会ではあるが、女性でうまくリーダーシップを発揮できるような人が出てくるとよいなと思う。今の世の中、女性の賃金が低く抑えられており、特に非正規の女性は低賃金に苦しんでいる。主張することができない。

岡田:3月9日の朝日新聞の記事で、「公務員の非正規雇用への置き換えが進み、大半を女性が占めている。DVの相談員が低待遇に疲弊、限界を感じている」と紹介されている。女性が低賃金で非正規公務員の職を担わされてきた。これは構造的な問題。

最後に今回は、以下の一節に集約し、続きはまた機会を作り意見交換するということで。こうして今回も、楽しい議論の2時間でした。

『女性の生き辛さは、男性の問題でもある。
女性が生き辛い社会は、男性だって肩肘張っているが、本当は生き辛い社会なのではないか』


今後も、著者のこの鋭い指摘を胸に留め、日々過ごしていきたい。

                             (岡田慶子 記)

 
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第42回「ライフプロデュース」研究会 開催のご案内
日時:4月4日(火曜日)17:30〜19:30 ZOOM開催です。
テーマ:「サプリメントの正しい活用法」
ファシリテーター:長谷川洋さん(NPO法人埼玉県健康管理士・ライフプロデュース研究会メンバー)
アシスタントファシリテーター:和田久子さん(米寿を迎えた現役薬剤師 ライフプロデュース研究会メンバー )

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posted by ライフプロデュース研事務担当 at 08:28| Comment(0) | ブログ
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